北京の非首都機能の移転計画: 雄安新区の妥当性

結論から書きます.

妥当どころか大成功を収めるでしょう.

それぞれ詳細を見ていきます.

北京, 天津, 河北省の経済状況と人口

北京市は行政, 司法の中枢たる首都機能に加え経済都市としても揺るぎない地位を確立しています. 北京市の一人当たり GDP は 16,300 USD (国内 2 位) であり, 隣接する天津市 (17126 USD, 国内1位) には及ばないものの, 河北省 (6509 USD, 18位) と比較すると約 2.5 倍あります. 直轄市 2 都市とそれを囲むように位置する河北省との経済格差はかなり大きいことがわかります.

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移転の目的
北京への一局集中の是正とこの新都市構築による経済効果を大きく立ち遅れた河北省にも波及させることで, 天津市を含めたより大きな経済圏を構築することにより河北省の一人当たりGDP を向上させ, 本地域のより均一な経済発展を目指しています.


天津市が一人当たり GDP で国内 1 位と述べましたが, 先進国の主たる自動車メーカーやボーイングの主力工場が進出している経済特区を有している関係です. 1984 年から 33 年間にわたり中国の成長を支える開発区として大きな成功を収めています. 日本ではあまり注目を集めることが少ない市ではありますが, 中国の成長と成功を体現した都市といえます.


以下に隣接する両直轄市の人口を示します. 近年は両直轄市共に人口の増加に落ち着きを見せていますが, 下記の通り各都市でその絶対数は大きなものがあります.


北京人口 2173万人 (2015年度)

天津人口 1562万人 (2016年度)


河北省 7384万人 (2014年)

省都: 石家荘市の人口 1070万人 (2016年)

データは各都市の HP より.


新都市の将来人口

200~250 万人を想定しています.

各主要都市と比較すると下記の通りです.


北京の12%, 天津の 16%, 石家荘市の 23%


上記の都市群と比べれば規模は小さいですが, 北京市の 1 割を移すとなれば大きな経済効果がありますし, 既に主要国有企業 40 社が協力を表明しています. また, 以降に述べますが本地区はこの想定人口にとどまらず, より大きな都市へと成長する潜在性があります.

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新都市のロケーション
北京, 天津から約 105 km, 石家荘市から約 155 km, 現在建設中の新国際空港 (仮称: 北京第2空港) から 55 km と, 新たに都市を建設するには最適な立地です.





かつて天津にビジネス地区を再構築するプロジェクトがありましたが頓挫しました. 天津港に近く国際貿易に適した立地でしたが, 天津市をはさんで北京市から約 250 km 程あり, 遠く離れすぎたために移転する優位性が見出せなかったためです.

少し話がズレますが, このビジネス地区の近くには天津空港もあります. この天津空港ですが, 天津市街又は天津港に続く地下鉄が走っているためアクセスは非常に良好です. 日本からは関西国際空港から本空港への直行便が出ています. 天津港の爆発事故時には天津港に隣接する駅が爆発に巻き込まれ大破した関係で長らく運行停止していました. あの時は車で空港から移動せねばならずかなりの不便を強いられたのを覚えています. 今では完全に復旧し主要路線として完全に復活いたしました.

天津市内の地下鉄は 2 元と安価です. より安価なバスは 1 元で乗れるため倍の料金が掛かりますが電車は定刻通り来るためこの利便性は計り知れません. そもそもバス停に時刻表が無いんですけどね... この地下鉄にはかなり重宝していました. 天津市で一番好きな乗り物です.

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話を新都市に戻します.
都市の形成には潤沢な水源が必要.
如何に適した立地といえども水が確保できなければ250万人に及ぶ都市機能を構築することは不可能です. この点においても本予定地は 漕河、南瀑河、萍河、南拒馬河 と多くの河川に恵まれているほか, 水面面積 366 km2 (琵琶湖の ½ 程度の規模) を誇る 白洋淀 (淡水湖) を有します.

本淡水湖は下流に天津市を有し, 本市の水がめとしての機能を果たしていますが, 洪水被害を防ぐため天津市に繋がる河川の水のほとんどを放水路により渤海に流しているのが現状です. それほどまでに大量の水が確保可能な場所なのです. ちなみに都市の誕生は水の大量消費先が生まれる事を意味します. 間接的ではありますが治水事業の一旦にもつながりますね.

まとめ
東京都や北京市の様に首都機能 (行政), 経済の一局集中型都市もありますが,行政と経済機能の分離は世界的には一般的であり, オーストラリアのシドニー, メルボルンと首都キャンベラとの関係や米国のワシントン D.C. とニューヨークの関係など多くの例がみられます.

今回の都市計画は北京, 天津市と新都市のそれぞれが地理的に関係性を保つうえで合理的な距離にあり, これらの都市を含む経済圏が十分に確立可能です. 先に述べましたが国有企業 40 社の協力も, その経済圏が持つ優位性が後押ししたことはあきらかです.

以降は推測ですが南方の巨大経済圏である香港, マカオを含む珠海デルタに次ぐ都市群へと成長することは十分に可能です. その潜在力がある地域であり本都市計画は妥当どころか大きな成功を収めると結論します.

投資状況について
幸運なことに関連する北京首都国際空港と天津港を有しています. 特に首都国際空港はその着実な業績推移が魅力的で保有していましたが, 今後の動向がより楽しみとなりました. 第二空港にも出資している会社です. 購入額と比較してすでに倍となりましたが, 中国がコケてもこの会社がコケることは先ず無いと判断しています. 今回の新都市計画でそれが揺るぎないものとなりました.

さて, これらの判断が正しいかどうか, 10 年程度の時間を見れば明らかになると思っています. また楽しみが一つ増えましたね.

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