PG (P&G) と UL (ユニリーバ) を比較した


米国株投資家に人気が高い The Proctoer & Gamble Company (PG) および Unilever PLC (UL) ですが, 過去1 年の株価は UL が S&P500 を大幅に over-perform する一方で, PG はこれまた大幅に under-perform する結果となっています.

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競争激化と需要停滞により, 苦しい状況に置かれている両社ですが, 堅実な業績に加えて生活必需品銘柄である安心感から投資対象としての魅力は健在です. そこで両社の業績推移を比較し, その傾向からどちらがより魅力的な投資対象なのかを考察することにしました. 比較した結果, KO と PEP の時にように甲乙つけがたい結果となることが目に見えているきもしますが, お付き合いいただければと思います.


S&P500との比較チャート 1 年

今年に入り, 社会的責任に注力していた UL が株主還元にも積極的な姿勢を見せ始めた半面, PG は安価な PB 商品との競争激化や需要停滞を背景に業績が低迷しています. この両社を取り巻く状況の差異が株価として現れていますね.

UL の株価は, 年初にハインツによる買収提案を受けた事を境に株価が急騰しています. 提案を受けた 2 日後に拒否の表明で急落を見せたものの, 株主還元策の拡大表明と前年に株価が急落していた反発も合わせてこの 1 年で 40% 高と大幅に株価が伸びています. その一方で PG は低迷する業績を反映して株価も低調です. この動きと同じくするように VDC の株価も S&P500 指数に大きく劣後する結果となっています.

企業説明
両社とも皆様良く知ってらっしゃる企業なので簡単な説明に留めます.


PGについて
世界最大の日用品メーカー, 取り扱い製品は各種洗剤, 消臭剤, 化粧品やベビー用品, 髭剃りなど多岐にわたります. 売上高の 41% が米国です.
洗剤のアリエールや消臭剤のファブリーズ, 化粧品の SK-II など日本人にもなじみ深い製品を山ほど生み出しているのがこの PG です. 日本では花王について 2 位の売上高を誇っています. 抱えるブランドの内 21 ブランドが年間販売額 10 億ドルを超えますが, その一方でブランドの再編も進めているため売上高が低下気味です. この再編ですが 2016 年末で一旦区切りをつけています.


UL について
フランスとイギリスに本社を構える家庭用品大手です. 売上構成比は北米 33%, 欧州 25%, その他 42% となっています.
PG との違いは, マーガリンの製造販売会社を由来として持つだけあり, 食料品の製造販売を手掛けている点でしょうか. 日本ではクノールやリプトンが有名ですね. 米国ではマヨネーズで最大のシェアを取っています. 仮にクラフト・ハインツとの合併が首尾よく進んでいた場合, 米国市場においてケチャップ, マスタード, マヨネーズで圧倒的シェアを誇るメーカーが誕生していました. 日本人にとっての味噌, 醤油, ワサビ? (七味か??) を一社が握るようなものです. 中々のインパクトですね.  


保有ブランド中 13 ブランドが 10 億ユーロを超える売り上げを誇りますが, その地位に甘んじることなく全世界で投資を継続し, 収益の約半分を新興国で稼ぐまでに成長しています. また, ブランドの再編についても余念がなく, 同社の由来であるマーガリンブランドの売却を発表しています. この辺りの欧米企業の決断力は目を見張るものがあります.
同社は英国株であるため配当に現地源泉徴収税がかからないのも魅力的です.
さて, それでは比較していきましょう.


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会社概要

会社名Proctoer & Gamble
Company
Unilever PLC
銘柄コードPGUL
業種トイレタリー用品トイレタリー用品
従業員数95,000168,832
PER24.4623.91
予想PER22.3821.5
PBR4.328.17
ROA8.23%10.20%
ROE17.85%32.61%
自己資本比率45.45%28.98%
予想配当利回り3.07%2.96%
参考元は SBI です


PG と UL の実績 PER, 予想 PER に大きな差はありません. また, 両社とも予想 PER と PER に大きな差は無く 24-21 倍と割高ではあるものの比較的適正な水準に収まっています.


続いて ROA, ROE ですがこちらは両指標とも UL が優秀ですね. 総資本, 株主資本共に効率的に使っています. また, 後ほどグラフで示しますが, この 10 年間一貫して 9-11% 程度の ROA を保っています. 今後の業績見通しにも安心感がありますね.


業績推移



データ元はモーニングスターの HP です. ※決算時期の違いでデータが一年ずれています.


PG について
2012 年には 820 億ドルの売上高を示し, 過去 10 年の最高益となっています. しかしながら近年は競合他社との競争激化とブランド再編による売却の影響で売上高が下落傾向です. 売上高の回復には M&A を通じた新ブランドの入手が最も手っ取り早い方法なので, そのうちどこか手ごろな会社を買収するんじゃないでしょうか.


売上高は右肩下がりの一方で, ブランド再編による利益率向上も手伝って, 純利益率はかねがね 16-13% 台で推移しています. およそ KO と同程度の利益率ですね.


ULについて
PG が売上高を低下させる一方で, UL は売上高の拡大が続いています. 新興国を含め積極的に投資を行ってきた成果が表れています. また, 特筆すべきは 2007-2009 年の金融危機前後の業績推移です. 未曽有の金融危機にあっても生活に密着した製品は変わらず売れますね. 一定の売上高を保っているのはさすがといったところです.


UL はサスティナビリティ重視の経営方針を採っていますので, PG と比較して若干純利益率は低下します. かねがね 8.5-10% の幅といったところです. 近視眼的な株主還元よりも社会の永続性により持続可能な株主還元を目指す姿勢は非常に好感が持てるところです. そんな UL もクラフト・ハインツからの買収提案を受けてからは, 徐々に株主還元にも歩み寄りを見せ始めています. ブランドの再編も進めていますから, 今後は徐々に利益率が上がっていくかもしれませんね.
安定の増収傾向では UL に軍配が上がりますが, 利益率では PG に軍配が上がりますね. 甲乙つけがたい結果です.


ROA, ROE 推移



PG について
ROE はかねがね 17-21% 程度, ROA については 8.5-9.5% 前後となっています. 株主還元策として継続的に自社株買いを行っているにも関わらず, 売上高と純利益の下落に追いつかず 2015 年までは ROE が低下傾向にありました. 2016 年末でブランド再編に一段落つきましたから, 過去 10 年の推移と比較して今後は多少落ち着くんじゃないでしょうか. 今後の業績推移が気になるところですね.


UL について
ROE, ROA ともに目を見張る値ですね. 効率的に資本を使っていることが分かります. ROE は 30-37% 前後, ROA は 9.5-11% で安定しています. 言うことありませんね. これらの指標に関しては UL に軍配が上がります.


CF 推移



両社共に素晴らしいキャッシュ創出力を有しています. 投資 CF をあまり必要としないため毎期多額の FCF を稼いでいることが分かりますね.
特に PG の FCF 創出力は素晴らしく, 営業 CF マージンがおよそ 16-20% 前後, FCF マージンが 11-16% 程度あります. CF 創出力は圧倒的に PG に軍配が上がりますね.
(2014-2015 年にかけて UL の投資 CF がゼロだったんですが, 会社 HP で裏どりしていませんので参考程度に見てください)


一株当たり利益や配当性向


両社共に近年の配当性向は 70% 前後となっています. FCF ベースでもほぼ同様ですから手厚い株主還元方針を採っている一方で増配余地はだんだんと少なくなってきています. 生活必需品セクター大手は押しなべて売上と利益, その両方の成長に苦しんでいる印象です. PG, UL 共に近年は急速に増配率が落ちています.


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過去 10 年の配当成長
PG:1.86 倍 (昨年増配率 1.5%)
UL:1.75 倍 (昨年増配率 5.9%)


現在の配当利回り
PG: 3.01%
UL: 2.82%


両社共に配当利回りを足がかりとして株価が値付けされている様に見受けられます. 増配率については UL の方が優秀ですから PG と比べて利回りが低いですね.


結論
利益率, CF 創出力については PG に抜群の優位性がみられます. その一方で過去の業績推移や増配率については UL がより魅力的ですね. また同社の社会的責任やサスティナビリティを重視した経営には非常に好感が持てます. やはり甲乙つけがたいですが, あえて選ぶとするならば, 私としては UL への投資を選好します.


売買状況
さて, そんな独断と偏見に満ちた結論へと達したわけですが, 生活必需品 ETF である VDC を通じて PG へは既に投資を行っています. その一方で, 残念ながら UL への投資はまだ実行できていません. VDC を買い増す方が今のところ優先順位が高いので悩ましいところです.


S&P500との比較チャート 10 年


10 年間の推移では 1 年間の比較時と比べて若干様子が変わります. VDC が圧倒的なパフォーマンスを上げていることは変わらず確認されますが, この VDC の 10%前後を構成する PG は 10 年で +23% のリターンとなっています.  UL についても前年まではほぼ同様といえる状況でしたが 2017 年に入り株価が急騰した関係で +58% と大幅にリターンが改善しました. それでもやはり S&P500 指数には劣後していますね.


この様な結果もあり VDC への投資を今のところ優先しています.

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上記, 生活必需品銘柄にまとめて投資するなら ETF が便利です
XLP と VDC を比較した. 生活必需品セクターへ丸ごと投資する ETF, 投資するならどっち?

高配当通信 2 社を比較しました.
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