日本株 株主への総還元額 (自社株買+配当) が過去最高を更新中

日本株の株主への総還元額 (自社株買い+配当) が過去最高を更新しています. 2007 年 に13 兆円程度あった総還元額ですが, 金融危機後に激減し 2009 年には 6 兆円程度まで低下します.

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株主還元額が過去最高を更新
急激に減少した株主還元額ですが 2010 年を境に徐々に回復し 2014 年に 2007 年度実績と並ぶ 13 兆円になりました. 2015 年,  2016 年は順調に推移しそれぞれ 16 兆円, 17 兆円 となり過去最高を更新しています.今期 2017 年はさらに 1 兆円増加し 18 兆円を予想しているようです.

グラフを以下に示します.
データは野村証券 Nomura 21 Global 2017 年 6 月号を参照し著者作成. 
以前参考にしたみずほ総研のデータと若干のズレがありますが傾向としては同じです.

現在の国内市場の株式時価総額合計額は 617 兆円あります (大和総研 グラフと表で見る株式市場 2017 年 7 月より). これを元に株主還元利回りを求めるとおよそ 2.9% です. あれ?? 期待したほど見栄えのある利回りじゃない...

株主還元額も増えましたが株価も上がりましたね. 日銀と GPIF による株価下支えのおかげといえます. 

内部留保も過去最高
目を引くのは累積で積みあがっている 578 兆円の内部留保です(17 年 1 月時点. 関連記事を参照下さい). 昨年だけでも 19 兆円が会社の純資産として積みあがっています. 今期に至っては更に 21 兆円も積みあがる予定です. 17 年末には内部留保の累積で 599 兆円になることを示します.

日本企業の場合は, 企業の業績に合わせた人員の最適化が手厚い労働者保護によりできないため, バッファーとしての純資産が必要なことも理解できますが, 多額の内部留保は資産効率を落としますし, 経営ミス (最近では東芝の HW 買収とか...) から積み上げた内部留保を毀損する可能性もありますので, 適切な額だけ社内に残して積極的に株主へ還元してほしいものです.

資本コストは高く付くのが企業の健全な姿です. ですから積極的な自社株買いにより資本金を減らし, 新規投資は借入金で実行することで, 株主から見て効率的な経営を目指さなければなりません. しかし日本の場合, 経営者の立場からは積極的に株価を上げる必要も無く, 配当等により株主へ利益を還元するインセンティブもありませんから, なかなか実行は難しい面があります. 経団連からは根強い反対がありますが, 私は富の再分配の観点からも内部留保金課税の導入が必要だと考えています.

そうはいっても一市民の意向で国政が変わるわけもありません. しかし投資先は自分で選択し簡単に変えることができます. 米国株を投資先の一つとして選択しているのも, 少なからずこういった理由がバックグラウンドにあります.

※2017/07/23 の日経新聞で, 今年の自社株買いが急減している旨の記事 (リンク先は日経新聞) が出ていました. そして自社株買いが減る理由は設備投資の拡充です. 設備投資が必ずしも投資家のリターンにならないことは, 過去の研究によりよく知られていることです. 日本企業への投資が難しい点の一つですね.

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関連記事です.
米国企業の株主還元額, 自社株買い総額は桁違いです.
米国企業はなぜ株主への利益分配に積極的となったのか -留保金課税から考える-

他にもいろんな記事を書いています. 詳細はタブ内を参照ください.

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