新興国株指数 MSCIエマージング・マーケット・インデックス (対象 ETF: EEM)

企業型確定拠出年金 iDeCo の投資先の一つとして本指数に連動した投資信託も選択できます.


MSCI (モルガンスタンレー・キャピタル・インターナショナル) が開発した新興国に特化した指数です.

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MSCI コクサイと同様にエマージングマーケットインデックスについても, 人によってはあんまり評判が良くないんですよね. その理由として日本と同様に人口減社会を生きている韓国と台湾が大きな割合を占めている点や, 中国に関しても一人っ子政策の影響から人口減社会が差し迫っている状況など, 新興国ならではの魅力 3 点が欠けかけている国が少なからず含まれています.

・人口増による生産年齢人口の増加 (人口ボーナス) と低賃金に支えられた目覚ましい経済成長
・その成長に引っ張られる企業業績の躍進
・その結果として現れる株高


このサイクルの継続が難しいと懸念される国が構成銘柄の 1 位(中国), 2 位(韓国), 3 位(台湾) を占め, これら上位国の投資比率が約 56% といった状況となっているからです. このベンチマークに連動した ETF または投資信託へ投資する立場としては不安に感じるのも無理からぬことです.


とは言いつつも, 私は本指数に連動する金融商品への投資は一考の価値があると思っています. 何故なら, 指数の上位に含まれる企業には国際競争力の高い企業が見受けられますし, 中国国内マーケットで自社のシステムがプラットフォームとして機能し, ほぼ独占状態にある企業も多く見られるからです.

これら企業はその独占的地位から莫大な利益を投資家へ生み出しますが, 私たちが得られる個別株の情報は限られる為,その会社への投資へ踏み切れない方も中にはいることでしょう. また, 情報として入ってこない優良株というのも一定程度存在する可能性が大いにあります. このギャップを埋めるために, インデックスファンドを通してこれらの成長を広く浅く取り込むのは妥当性があるわけです. しかも得られる情報が限られている新興国であればなおさらですよね.


私は未だに個別株中心です. そして, Google やテンセントへの投資も金融危機直後に何度か検討しています. しかし, バリュー株投資家であった私には, それらの会社が社会インフラとして定着していることを理解しつつも, 結局は検討どまりで投資することができませんでした. 生粋のバリュー株投資家は, 投資家としてのそのこだわりが邪魔をしてこれら企業への投資へと踏み切れません. これはバリュー株投資家を例とした場合ですが, グロース株投資家も同様ですよね. 毎月安定したインカムを与え, 暴落時にはストッパーとして働く銘柄群を投資先から除外するために, 必要以上のボラティリティとリスクをとったポートフォリオを作ってしまいます.
これらは個別株投資家が起こす重大で致命的な損失です. こういった損失を ETF または投資信託を通したインデックス投資であれば防ぐことができます.


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バリュー株投資家である私は, この過去の失敗から, アリババ, JD, 百度, ペイパルなどグロース銘柄への投資を一定程度行うようにしています. 配当再投資を単調に続ける投資という名の耐久マラソンに少しばかりの遊び心でスパイスを付け加えてみるのも長く楽しむ秘訣かもしれないですね. もちろんそのスパイスは素材 (ポートフォリオ) の味 (バランス) を損ねない様に節度を持って添えるのが肝要です.


MSCI エマージング・マーケット・インデックスに連動する ETF は Black Rock が取り扱っています. ティッカーシンボルは EEM です.


EEM の情報


セクター比

情報技術と金融で指数のおよそ 50% を占めます. この辺りは先進国株式と共通するところがありますね. その一方で先進国株で上位 3 位に入るヘルスケアが見当たりません. どこにあるかというと, その他の前の紫色, 率にして 1.9% です. ヘルスケア, 人の健康, もっと言えば命に係わる医薬品の開発は金も時間もかかります. また, 候補化合物にたどり着くまでに積み上げる構造活性相関等の関連情報, 原薬を効率的に合成するためのプロセス化学に関する経験は投資家の目には見えませんが重要な資産になります. そしてこの積み上げられた経験は特許も含めて高い塀となり, 他社の参入を拒みます.

加えて, 魅力的な候補化合物を有する新興企業が表れた場合には, 先進国の製薬大手 (メルクとかロシュとか) がその候補化合物を欲しさに会社を丸ごと買収してしまいます. この様な状況を眺めてみると, 新興国企業から世界的な製薬メーカーが生まれ出るにはもう少し時間が必要なんだろうなと, この分野の研究職を本業としている私からはそう見えますね.


投資先国比率上位 10ヵ国

先に挙げた通り中国, 韓国, 台湾の 3 国で指数の半数以上を占めています. 人口減社会を迎えようとしているこれら 3 国ではありますが, 台湾, 韓国については国民一人当たり輸出額は中々立派です. 日本と異なり国内需要がその人口により限られている中で, 国際競争力のある製品を生み出すことでこれらの国は発展を遂げてきました. 日本, 米国と比較してもその値はずば抜けています.


2015 年
台湾 11,176 USドル (世界 22 位)
韓国 10,371 USドル (世界 24 位)
米国 4,941 USドル (世界 43 位)
日本 4,914 USドル (世界 44 位)


国内需要や GDP は人口減により下落圧力がかかりますが, 生み出す製品の需要が世界中にある限り, 台湾, 韓国は引き続き発展を遂げるでしょう.


ちなみに中国の一人当たり輸出額は 1,650 USドルです. 貿易輸出額では 2 位のアメリカ (1.60 兆ドル) に 1.5 倍の差をつけて断トツの一位 (中国 2.27 兆ドル) です. 中国の一人当たり〇〇は抱える人口が多すぎて殆ど参考になりませんね.


人口が増え新興国として魅力的な市場であるインドは 8.5% の組入比率です. もう少し多く組み入れてくれていると嬉しいんですけどね.

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バンガードにも新興国株に特化した ETF がありティッカーは VWO です. この ETF は FTSE の指数を使用しており, 構成国比率が MSCI と異なります. FTSE 指数の特徴として, 韓国の組み入れがほぼゼロの代わりに台湾とインドの組み入れが増えています. 人によってはこちらの ETF の方が好みに合うかもしれませんね.


上位構成銘柄 10 社


組み入れ上位 10 銘柄
(%)
TENCENT HOLDINGS
4.89
SAMSUNG ELECTRONICS
4.39
ALIBABA GROUP
3.92
TAIWAN SEMICONDUCTOR
3.51
NASPERS LIMITED
1.9
CHINA CONSTRUCTION BANK
1.39
BAIDU
1.26
CHINA MOBILE
1.23
INDUSTRIAL AND COMMERCIAL
BANK OF CHINA
1.07
HONHAI PRECISION INDUSTRY
1.07
上位 10 銘柄合計
24.63


この中で見慣れないのは Naspers と Taiwan semiconductor でしょうか.


Naspers は南アフリカのメディア企業ですが, 本業よりその投資手腕に一目置かれる会社です. テンセントがまだ無名な時に投資を行い 34% の株を所有する筆頭株主です. 本会社の価値の大半は投資したテンセント株によりますから指数の 6% はテンセントでできていると見ることができます.


Taiwan semiconductor は半導体受諾製造大手らしいです. あとは良く分からないです.


赤字は私の投資先です. 投資比率は違えどもそこそこ銘柄が被っているんですよね. しかし, これら投資先の中で最も魅力的なテンセントを買っていなかったことがやはり悔やまれます.


EEM の経費率
0.72%

中々の経費率ですね. 会社で加入している確定拠出年金で選択できる投資信託の信託報酬は 0.85% 前後だったのでそれと比較すれば安いですが, それでも 0.7% 前後は少し高めですね.
   
過去 10 年間のチャート

現在の取引価格は 45ドル前後です.
上記 10 年チャートの通り, まだ金融危機前の高値 54 ドルを超えていません.  2008 年の金融危機後の最安 19 ドルと比較すると 2.3 倍程度の値上がりを示しています.


新興国 ETF との比較 (EEM, VWO)

投資先が類似する VWO と比較してみましたがなんかほとんど一緒ですね. ドングリの背比べ再びです. どちらを選ぶかは好みですね.

分配金利回り
1.28%


EEM 分配金推移
分配金 (ドル)
20130.858377
20140.875651
20150.802091
20160.662191

分配金額に波があります. 新興国企業の多くが業績連動型の配当方針を採っているからです. 分配金利回りも 1.28% 程度ですから先進国 ETF の TOK 等と比較すると若干見劣りしますね.


まとめ
新興国株式をポートフォリオに加えるには良い指数ではありますが, 分配金利回りや分配金の推移は今一つです. メインの投資先とするよりは現在保有する金融商品ではカバーしきれない部分を穴埋めする手段として, 本 ETF の購入を考えるのは一考の価値があると判断しています.

私の投資方針
私のポートフォリオの半分は中国でできています. よって, すでにかなりの部分を新興国市場に依存しておりますので, 今のところ本指数に連動した商品を買う予定はありません. しかし, 広く浅く新興国市場へ投資したい場合には VWO と合わせて投資を検討してもいいと思っています. ちなみに私は VWO の方が好みに合っています.

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私の投資状況です.

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