2017 年度版バフェットからの手紙 日本語訳 (4/4) 2018 年 2 月 アニュアルレポートから

前回 (その他事業, 及び投資事業) の続きです.

賭けの結果についてです.

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賭けの結果について
賭けが終わったことと, この賭けは予想外の投資に関する教えを届けてくれました.


(じゅん補足:バフェットはヘッジファンドと S&P500 のどちらがより良い成績を収めるのか 2007 年から 10 年間にわたる賭けを行っています. その結果が今年出たようです.
ちなみに昨年までは S&P 500 の圧勝でした. ヘッジファンドについては 5 本のファンドオブファンズを通じて 200 を超えるヘッジファンドの持ち分を保有すると仮定しています. そしてこの 5 本の中身はいつでも再編成が可能としています. ちなみに賭けの賞金は勝った方が指定している慈善団体に寄付されます.)


結果


結果だけ意訳します.




・S&P500 の圧勝
・すべてのヘッジファンドが金融危機で S&P500 を圧倒した. でもその後は全然ダメ
・ファンドマネージャーは手数料ボリ過ぎでウハウハだった 10 年間.
・投資家は手数料ボラれ過ぎで失われた 10 年間.


パフォーマンスは行ったり来たりとフラフラしても, 手数料は変わりません.




この賭けは投資に関する別の重要な教えを照らし出しました.
マーケットは一般的に合理的ですが, 時には狂ったことをします.


目の前に転がっている絶好の機会をその手に掴む為に, 偉大な知能, 経済学の学位, アルファやベータなどのウォール街の専門用語に精通している必要はありません.




代わりに投資家として要求されるものは,


暴落時における恐怖や, 高騰時における熱狂を無視し, いくつかの単純で基本的な部分に注目する能力です. そして, 時として想像力が無いと見えるほどの (または愚かとみえるほどの) 持続的な意欲が, やはり不可欠なものなのです.




この賭けの期間, 額面 50 万ドルのゼロクーポン債を購入し, この償還価格である 100 万ドルを賭けの賞金とすることにしました. その名の通り, 保有期間中に利息は支払われませんが, 満期まで保有すれば年率 4.56% の収益をもたらすものです.


元々の予定では 2017 年後半に満期となったら年間収益を計算し, 寄付することを予定していました.


しかし, この債券を購入後, 債券市場で奇妙なことが起きました.


2012 年 11 月までに, この私たちの債券は (償還予定の五年前であるにもかかわらず) 額面金額の 95.7% で売買されていました. この価格では満期までの年間利回りは 1% 未満です. 正確に表現すれば 0.88% でした.


その哀れなリターンを考えると, 私たちの債券は馬鹿げた投資先となりました. アメリカ株への投資と比較すれば本当に馬鹿げたものです.


S&P 500 (時価総額加重平均により米国ビジネスの巨大な断面を反映したものです) は株主資本 (純資産) に対して毎年 10% を大幅に超える利益を生み出しています.



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2012 年の 11 月時点で私たちは以下のことを考慮しました.


S&P 500 の配当収入は 2.5% あり, 米国債利回りの 3 倍ありました. そして, これらの配当支払い額はほぼ一貫して増加しました. そしてさらに巨大な金額が S&P 500 を構成する会社に内部留保されました.


これらの企業は内部留保された利益剰余金を使用して事業を拡大したり, 自社株買いを行ったりします. どちらの使い方を採るにしても, 時間の経過とともに一株当たり利益は大体増加します.


そして, 1776 年以来そうであったように, 何であれちょっとした問題が生じることはあっても, アメリカ経済は前進していきます.


2012 年には, 債券と株式の評価に関し, これらの間にとても大きなへだたりがありました.
私たちは 2007 年に購入した債券を売却し, その代わりに 11200 株のバークシャー B 株を購入することにしました. その結果, 元々望んでいた 100 万ドルではなく 222 万ドルを受け取ることとなりました.


2012 年の入れ替え以降, バークシャーは輝かしい事をしたわけではありません. のことは強調しておきます. 何も輝きは必要ありませんでした. 結局のところ, バークシャーの利益は年率 0.88% の債券利回りを打ち負かしていたに過ぎないのです.


債券からバークシャー株へ入れ替える唯一のリスクは 2017 年が株式市場の弱気相場と一致する事でした.


私たちはこの点の可能性については非常に低いと感じました. この結論に至るには二つの理由がありました.


①2012 年後半におけるバークシャー株のリーズナブルな価格
②賭け金が決済される 5 年間にバークシャーがほぼ確実に築き上げる巨大な資産


この 2 つです.


たとえそう思っていたとしても, 債券からバークシャー株への入れ替えに伴い生じる寄付金へのリスクを全て排除するために, 2017 年 11 月のバークシャー株の売却の際に, 売却金が 100 万ドル以下だった際にはその不足分を私が補てんすることに同意していました.




投資とは即ち, 今の消費を先送りすることにより, 後でより多くの消費を行えるようにする活動です. そしてリスクとは, この目的が達成されない可能性があることです.


この基準から「リスクフリー」と称される長期債は 2012 年では, 株式の長期投資と比較してはるかにリスクの高い投資となっていました.


その時, 2012 年から 2017 年の年間インフレ率が 1% であったとしても, 私たちが売却した国債の購買力は低下していたでしょう.


次の日, 次週, 又は数年であれば株式のリスクは短期米国債と比較して高い,はるかに高いと私もすぐに認めます.


しかし, 長期投資になるにつれて, 米国株に広く分散されたポートフォリオは (金利と比較して相対的に妥当な値段で株を購入したと仮定したならば) 徐々に債券よりもリスクが低くなります.


ポートフォリオの株式と債券の比率によって投資のリスクを測ることは, 長期の視点 (年金基金, 大学基金, 貯蓄目的の個人) の投資家にとっては本当にひどい間違いです. 多くの場合, 投資ポートフォリオに高格付け債券を組み込んだ場合, そのポートフォリオのリスクを増加させます.


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私たちの賭けにおける最終レッスン
大きなことにこだわり, 簡単な意思決定をする. そして, 動きすぎることを避ける.
(大局を見て判断し, 小事で動きすぎることを慎む. ってことですかね.)
10 年の賭けの間に関わった 200 人以上のヘッジファンドマネージャーは, 何十万という売買の決定を行いました. そして, これらのマネージャーはほとんど間違いなく, 意思決定に際し賢明に考えて, 裏付けを行い, そしてその決定が有利であると確信していたことでしょう.


投資の過程で彼らは決算書を分析し, 経営陣へのインタビューを行い, 業界紙を読み, ウォールストリートのアナリストと相談もしました.


一方でその間に私たちは動向を調査するわけでもなく, 洞察力を磨くわけでもなく, 10 年間でたった 1 つの投資決定をしました.


私たちは私たちが投資した債券を 100 倍以上の利益 (売却価格 95.7ドル / 利回り0.88%) で売却することを単純に決定しました. これはその後の 5 年間では増やすことのできない利益でした.


私たちは私たちの資金を一つの証券に移すためにその売却を行いました.
バークシャーは多様で堅実な事業グループを有する企業でした. 剰余金に支えられてバークシャーの株価は伸びます. 仮にまぁまぁの経済状況を経験したとしても, 年間の株価上昇が 8% 以下の伸びに押さえられる可能性は低いでしょう.


この様な幼稚園児並みの分析の後, 私たちは債券からバークシャー株への切り替えを行い, 一息つくことにしました.
私たちは 8% が 0.88% を打ち負かすことについて, 本当にたくさんの確信を持っていましたからね.

ミーティング (株主総会) 開催に関連するバフェットのコメントについての翻訳は省きます.
簡単な内容にとどめますが, 毎年いっぱい人が来てくれるし, 動画ストリーミングサービスで会場に来なくても見れるようになったよーといった内容が書かれていました.


最後に, 後任候補 2 名が副会長としてバークシャーに携わることに感謝の意を述べて今年の手紙を締めくくりました.



2017年バフェットからの手紙は以上です.

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関連記事です.
2017 年バフェットからの手紙. 2018 年 2 月アニュアルレポートより
前回 (その他事業, 及び投資事業)


投資だけでなく, 人生においても参考となる助言が多いのもバフェット氏の特徴です.
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