住民税課税方式の実質見直し: 今年の確定申告 (2016 年分所得) から適用可能だった!

2016 年 12 月 8 日に公表された 「平成 29 年度税制改正大網」によって, 上場株式等の住民税の課税方式が見直されていました.
上場株式等の配当所得については, 以前から [申告不要制度] [申告分離制度] [総合課税制度] を任意に選択出来たのですが, 所得税と住民税で別々の課税方式が選択できることが明確化されました. これは現行法の解釈を明確化しただけなので, 条文の変更は必要なく, どうやら 2016 年分の確定申告から適用可能だったようです.


この公表と共に, 適用時の手順も明確化されました.

下記のとおりです.
① 所得税の確定申告書が提出された場合は、当該確定申告書を提出した日に住民税の申告 書を提出されたものとみなす。この場合、所得税の確定申告書に記載された事項は住民税の申告書に記載されたものとみなす。
② ただし、同日前に住民税の申告書が提出された場合は、この限りでない。
注意点
上記の通り, 住民税と所得税で別々の課税方式を選択する場合は
確定申告書を提出する日の前日までに市区町村の税務申告窓口, その旨を伝える必要があります. 確定申告前に住民税の申告書を提出していればそちらが優先されるということです.
提出書類の様式について
提出時に問題となるのは, 上場株式等の譲渡所得等について, 市町村によっては明細を記載するための様式が無い可能性があることです.
この時には
①株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書
②特定口座年間取引報告書
のコピーを添付し,
住民税と課税方式が異なる確定申告書を提出予定であることを窓口で伝えれば良いようです.
申請事例
特定口座の取引を確定申告をした場合は, 国民健康保険料の算定基礎に含まれます.
所得税や住民税を損益通算し たり税額控除が出来ても, 国民健康保険料の賦課額が税額の還付額を上回る場合があります. 特定口座の『源泉徴収あり』の株式等の所得を申告するかしないかは、総合的に判断する必要があります.
課税方式が社会保険料負担へ与える影響
所得税と住民税で異なる課税方式を選択することがメリットとなるケースを 3 例示します.
1例目
上場株式等の配当所得について総合課税を選択することが有利であった場合において,「上場株式等の配当所得について所得税は総合課税, 住民税は申告不要制度(または申告分離課税)」を選択することで住民税の税負担を抑えられるケース.

配当控除の申請のため総合課税を適用した場合, 住民税率は 10% と計算されます. 配当控除後には最小で 7.2% です. この場合, 住民税では申告不要制度又は申告分離課税を選択することで 5% の課税だけで済むため税率が低くなります.
2例目
自営業者や年金生活者等が損益通算や繰越控除を利用する場合において、住民税は申告不要制度を選択することで社会保障制度への影響を回避できるケース.
国民健康保険料, 介護保険料, 後期高齢者医療保険料は住民税における所得金額をもとに決定されます. よって, 配当所得と譲渡損失の控除については申告分離課税を選択し, 住民税については申告不要制度を選択することで社会保障費の増加を抑えることができます
3 例目
私にとっては下記が一番影響が大きいでしょうか.
保育料を支払う子育て世代への影響
所得税は申告分離課税により損益通算, 住民税は申告不要制度を利用.
同じく住民税額で支払い額が決まる保育料を収めている子育て世代は, 損益通算で控除しきれず所得が生じた場合において, 支払い住民税が増加するため, 保育料が上がる可能性があります. これを回避するために住民税については申告不要制度を選択することができます.

税金の計算は個々の家庭事情により有利不利が変わると思います.
各人に合った制度を上手に利用していきたいですね.

大切なのは使える手段を増やすために, できる限り情報を集めることだと思います.

追記
最近 (2017/04/13) この大網に関連する記事が増えてきましたね. それらによると, 来年の確定申告 (2017年所得) からは市町村の税務申告窓口への申請を必ずしも確定申告前に行う必要は無くなるようです. より使いやすいルールとなってよかったと思います.
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