株式投資の社会的意義①

資産運用の手段として注目される株式投資ですが, 個々の資産を増やす手段としてだけではなく, 大きな社会的意義のある活動です. しかし, 株式が持つ値動きの荒さから投機やマネーゲームに利用される例も多く, 一般的な日本人にはあまり受け入れられていないのも事実です. そんな現状を憂い, 今回は真剣に株式投資の意義を考察することとしました.

本記事の活用法
例えば, パートナーとの間で株式投資に関する認識が異なり, 互いの意見についてすり合わせが必要となった際などに本ブログ記事が少しでもお役に立てれば幸いに思います. 株式投資の意義や株式が社会システムとしてどの様な役割を担っているのかご理解いただける内容としたつもりではありますが, 分かりにくい点などはご指摘いただけると幸いに存じます.

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株式投資は資産運用の 1 手段. 預貯金も資産運用の 1 手段にすぎない.
良く知られたことですが, 私たちが労働で稼いで得た給料を銀行に預金すれば, そのお金は銀行が決めた貸出先に流れ, それが企業であれば彼らの生産活動に用いられます. 一部は企業に, 一部は国債の購入として国に, 一部は個人の住宅ローンや自動車ローンとして貸し出され, こうして間接的にお金を貸し出すことで経済が流れていきます. 銀行は個人または企業から借り入れたお金の元本を保証する 一方で相応のリスクを取り, 先の貸出先にお金を流します. 個人では難しい貸出先の選定と分散投資を銀行が代わりに行ってくれています. この手数料として借り入れ金利と貸出金利の差を利ザヤとして得ています. 最近, ソーシャルレンディングの広がりにより銀行業が淘汰される旨の話を良く聞くようになりましたが少し考えただけでも以下の 4 点への対応に懸念があります.


①貸出先の選定 (貸し倒れリスクの計算, 貸出金利の決定, 貸出期間による各種調整等)
②多額の貸出への対応 (数千億円規模の貸出など個人では不可能でしょう)
③問題発生時の対応 (不良債権化時の対応等, 権利者が多くて収集が付きません)
④元本の非保証 (個別の案件が抱えるリスクを直接引き受けることとなります.)


銀行へ預金するという事は, これらへの対応に対するサービス料を利ザヤという形で手数料を払い銀行に運用を委託している状態です. この様に見てみると銀行業が淘汰されるという話は幻想であることが分かります. これら全てへの対応はソーシャルレンディングでは不可能だからです.
少し話がズレました. 銀行にお金を預けるという事は, この様に銀行からの貸出金として経済活動に間接的にかかわる行為であることに間違いはありません.


株式投資は資本提供という形で経済に関わる行為
企業が事業を行う際に用いるお金には 2 種類あります. それは自己資本他人資本です.

自己資本: 貸借対照表の純資産の部に書かれるものです
他人資本: 貸借対照表の負債の部に書かれるものです

銀行への預金は他人資本として負債の部に入ることで企業の事業に寄与し, 株式投資は自己資本として純資産の部に入ることで企業の事業に寄与します. この様に見ると分かりますが, 銀行に預ける行為, 株式投資をする行為は, その関わり方が異なるだけで共に企業の事業に寄与することで社会が回りその発展を支えることが分かります.

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株式への投資は企業の一部を所有する仕組み.
企業の所有権を分割し保持する仕組みを作り, 更に企業が生じた損害に対しては自分が出資した金額を上限として責任を限定する有限責任の仕組みを作った事は素晴らしく, 先人の知恵に感謝しなければいけません. この仕組みによって私たちは自己が持てるリスクに対応した範囲で各企業を所有することができ, 労働者で在りながら資本家としての道が開かれるようになりました.

資本コストは髙い
出資者の権利は全ての権利に劣後します. 債権者は企業の債務が不履行となった際には, 資産を売却して貸出金の一部を回収できます. しかし, 出資者はこれら権利者への分配を終えた後に残ったものが配分されるため, 基本的に出資金を回収する事が出来ません. これが株式投資を行う際のリスクになります. 倒産リスクという事です. この全ての権利に劣後する形で出資を行うため出資者の私たちから見ればリスクが高く, (本来ならば) 出資を受けたものから見れば資本コストは高く付くものとなります.

この様に相応のリスクを取りお金を資本として提供するのですから, その行為は社会的意義の高いものとなることに疑いはありません. 特に私たちはそれぞれが労働により稼いだお金を提供していますから, なおさらその意義は大きいといえます.

続きます.


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