日本人の投資状況について② -個人投資家の投資額は?-

前回の記事より, 日本国内には有価証券へ投資を行っている人は 1872 万人存在し, 率にして 20 歳以上人口中 18% 程度いることが分かりました. さらに, この 1872 万人中, 株式に投資している人口は 1324 万人います (20 歳以上人口中 12.7%). 今回は有価証券に投資している 1872 万人に焦点を当て, その実情を見ていきます.

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有価証券投資家の年収別構成比
日本証券業協会資料より集計し著者作成

有価証券投資家の年収別構成比です 0-300 万円未満で構成比の 53.4% を占め, 過半数が 300 万円未満の層であることが分かります. 『投資は金持ちのやる道楽』といったイメージがいまだに根深く残っていますが, 年収が 1000 万円を超える方は 4.2% しかいません. 本データからはむしろ『一般的な資産運用手段』として株式投資が利用されている事が分かります.

投資額は?
さて, ここで気になってくるのはこれら投資家の投資額です. どれくらいの金額を投資しているのでしょう. 先ずは年収別株式投資額の平均値を見ていきます.

年収別株式投資額の平均値
全体平均で 578.3 万円あり, 平均値としては比較的まとまった金額を投資していることが分かります. このグラフをみて少し疑問を持たれる方が多いのではないでしょうか, それは年収と投資額に僅かながら相関はあれど, その傾向が一部崩れている点です.

日本証券業協会資料より集計し著者作成

特に年収 0-300 万円未満までの層では年収に比例して投資額も上がりますが, 年収 300-500 万円未満の層では年収と逆相関になり, 300-400 万円の層と 400-500 万円の層を比べると 200 万円もの差があります. この理由は何故でしょうか. その答えはしばしお待ちください. 年収別投資額内訳を見ながら解説していきます.
ところで年収 1000 万円以上の投資額はずば抜けていますね. これはもう解説するまでもないでしょう. 流石といったところです.



年収別投資額内訳
全体の値から 10 ~ 300 万円未満の保有額が全体の約 60% を占めているのが分かります. 仮に全額を失っても手取り年収で賄える範囲に留まる投資額ですね.
日本証券業協会資料より

面白いのは先ほど言及していた年収 300 万未満までは各帯域で徐々に平均投資額が増加していきますがその後 300-500 万円未満の層で減少する点です. 細かく見ていきます. 年収 200~300 万円未満では投資額 300 万円以上 (紫から上) が本帯域の 51.7% を占めています. しかし 300~400 万円未満, 400~500 万円未満と年収が上がるにつれて 300 万円以上を投資している割合がそれぞれ 48% (300-400 万円未満), 32.3% (400-500 万円未満) と減少していきます. この傾向が先ほどの平均投資額の波にも表れています. なぜこの様な事が起こるのか.


この理由は明確です. この年収 200~300 万未満の帯域は, 退職し年金生活を送っている世代を多分に含んだ層になるからです. 国民年金 (平均 5.5 万円/月)+厚生年金 (平均14.7 万円/月) の合計支給額が 20.2 万円/月 ですから年間にすれば 240 万円程度になり丁度この帯域に収まることが分かります.  


それ以上, それ以下の年収帯はそれぞれ若年層, 子育て世代等の現役世代となりますから現在資産形成真っ只中の方たちです. よって, 退職を迎えた世代と比較して金融資産を有しませんから必然的に投資額が低下します. 一方で既に退職を迎えた方たちは既に資産形成を終え, その資産からのキャッシュフローまたは取り崩しにより生活をしている世代になります. この違いが年収別投資額の逆相関として現れたのです.

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月収からの平均投資割合
続いて気になるのは月の収入からいくらを投資にまわしているのか, その割合です.

日本証券業協会資料より

一見して「金融商品には回していない (32.1%)」「 該当する収入はない (17.8%)」が目立ち, 全体の合計で 49.9% と約半数を占めています. 積立て投資, 継続購入が予想以上に難しいことを示しています. 定期的に投資する環境を自分で積極的に用意しなければその行動を続けることは難しいのでしょう. iDeCo, 積立て NISA の利用が推奨される一つの理由です.

一方で年収別, 収入からの投資割合の増加は年収の増加と強い相関がみられます. 年収が上がるほど可処分所得が増えるのは当然ですからその傾向に沿っていることが分かりますね.


一般的な現役世代の年収帯域といえる 300~700 万円の帯域では月収の 1~10% を投資する割合が 32~35% を占めています. この帯域は積極的に資産形成しなければ将来の生活が立ち行かなくなる世代です. せめて月収の 20% 以上, 願わくば賞与の全額 (難しければせめて半額) は投資に回すくらいの計画性を持ち, 日々の生活を組み立てることを推奨します. こうする事である程度の選択肢を持った余裕ある人生を送れます. ローンとカードの支払いに追われる毎日では, いつまでもラットレースから逃れることはできません.

年収 1000 万円以上の投資割合.

注目に値するのは富裕層と言える 1000 万円以上の所得を持つ投資家の行動です. 年収 1000 万円未満の層では年収の増加に比例して月収に対する投資額 10% 未満も増加傾向にありましたが, 年収 1000 万円以上ではむしろ 10% 未満が減少しそれ以上の投資割合すべての構成比が他の年収帯域と比較して上昇しています. 特に「20-30%」と「50% 以上」の割合増加が目立ちます.『富めるものは何故更に富むのか』その理由が透けて見えますね. 


賞与から金融商品に投資する割合.
該当する収入は無いが年収 300~400 万円未満, 400~500 万円未満の帯域でそれぞれ 40.7% 又は 29.5% と最大数を占めています. さらに年収 500 万以上の 22~24.1% は賞与が無いことが分かります. もちろん, 中には年俸制の方も当然いらっしゃいます. しかし子育て世代を含む年収 400 万以上の投資家の 4 人または 5 人に 1 人は賞与が無いのは予想外です.

日本証券業協会資料より

賞与は積極的に投資しよう.
手を付けたくなる気持ちもわかりますが, 賞与はある意味で会社が労働者の代わりに半年分の給料を積み立ててくれていたものです. この賞与の支払いを当然として日々の生活を組み立てては, 不景気で賞与が減額又は支給されなくなった際に生活が立ち行かなくなります. これでは目も当てられません. 幸運にも賞与がある会社に勤めている方はその事実に感謝しつつ, このアドバンテージを活かすべく積極的に投資へとまわしましょう.


ここまでは金融商品へ投資する一般投資家が置かれた状況を考察してきました. 次回は株式投資家 1324 万人 (20 歳以上人口中 12.7%) に注目し, その投資行動を考察していきます. 続きます.

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