H社が販売するタイムシェアと呼ばれるリゾート会員権. その中身とジワジワ来る地雷感がたまらない

ハワイへと旅行に行った際に, 国際的に広くリゾートホテルを運営する米国の会社 (H社とします) が所有するホテルの一室をタイムシェアとして購入しませんかと勧誘を受けました. せっかくですので, 学んできたその中身を共有しようと思います.

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※そもそもこういった商品は投資目的とはなり得ないものです. 利益が出るなら販売元が自ら運営すればよいからです. しかもこういった商品は入会金 (ホテルの一室を年 1 週間利用する権利の購入金) で数百万円かかるうえに, 年間の管理費として十数万円かかります. 贅沢品として購入する際にもよく考えてから決めましょう.



タイムシェアとは
ホテルの一室を何人かのオーナーで共同所有する商品です.
日本ならリゾートトラストがこの商売を行っています.
リゾートトラストの XIV (エクシブ) はローマ数字の 14 を意味し 14人で一部屋を共同所有することから来ています (学生の時に住み込みのアルバイトをエクシブで行った際にホテルの管理者から説明を受けました. こちらの記事の最後に余談としてその時の労働環境を綴っています. このバイトは私が投資を始めるきっかけの一つとなりました).


さて, 今回勧誘されたタイムシェアの中身は以下の通りです.

タイムシェアの中身
・一年間の好きな時期に 1 週間滞在できる権利が得られる.
・オーナー (タイムシェア購入者) のみが利用するホテルである.
・部屋の管理は全て H社 が行い, 家具, 家電の管理, 更新も全て任せることができる.
・歯ブラシと着替えだけ持ってくれば, その他必要なものは全て部屋に揃っている.
・滞在時に差額 (2-3 万円/日) を払えば部屋をアップグレードできる.
・H 社のホテルと同様の高いサービスが受けられる.
・繁盛期でも確実に予約が取れる (取れなければ, 予約するタイミングの悪いオーナーが悪いと販売員さんがいってました...おいおい...)



こんなところでしょうか.
モデルルームを拝見しましたが, 確かに良い部屋でした.



米国のホテルでは珍しくちゃんとお湯の張れる浴槽がありました. さらには 3 口のコンロが付いたキッチンに冷蔵庫, 電子レンジ, 洗濯乾燥機も付いています.


これだけ揃えば快適に滞在できることは容易に想像できますね. 確かに魅力的なお話です.
そして, このサービスを受ける為に必要な費用は以下の通りです.

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費用
・タイムシェア購入費: 550-800 万円
・管理費: 16-20 万円/ 年 (為替により変動. インフレや税金に連動し上昇)


これ以外にかかる費用は殆どないので中身はシンプルです. しかし, なかなかな値段ですね.


ただ, ちょっと違和感を感じたのはこの商品に関する販売員さんの売り文句です.



「1 泊 6 万円は高すぎます*. リゾート楽しむのにお金をかけていられないでしょう?」
「タイムシェアで賢く節約し, もっと手ごろにリゾートを味わいませんか?」
*今回の旅行で 6 万円/泊 の部屋に 1 週間泊まりました.

※今回宿泊した部屋からの眺めです. 1 歳の息子が私の一眼レフで撮りました.


リゾートホテル一室の料金は部屋からの眺めで殆ど全てが決まります. 同じ建物, 同じ部屋でも海が見えなければ 250-270ドル/泊となり, 今回宿泊した部屋の半額まで下がります.
そして, 今回旅行で使用した部屋と同レベルの部屋がこのタイムシェアで用意されるわけでは決してありませんから (タイムシェアの部屋は基本的にシティビューです. 立地も眺めも私が今回泊まったホテルより数段劣ります), 今回の旅費を基準として高い安いを議論されるのは心外ですし論点が大きくズレています.


良い部屋, 良い建物は売らずにホテルとして貸し出した方が H 社としても益が大きいでしょう. 良い値段で貸し出せない部分を所有権として切り売りし, 年間の維持管理費として定期的に会費を徴収できれば H社の経営が安定するからそうしているだけなのです.


私たちが負う費用の対価として実際に得られる僅かばかりのメリットは H社のリゾート会員であることに対する優越感と年に 1 週間だけ満たされる所有欲だけです.


あれこれ妥当な理由を述べながら購入を断る私と父に販売員さんから一言,


「こういったものは損得で測らないで下さい. いつでも好きな時にリゾートを満喫できることに意味があるんです」


おぃ!!「賢く節約してリゾートを満喫」じゃなかったのか??
あっさり前言撤回かよ!!

ちなみに会員であることを止める際には部屋の所有権を手放しますが, その時の金額を伺ったところ

「半額になるかなーどうかなー. 投資じゃないんですから手放すときの値段なんて気にしても仕方ないですよ」

こんな感じで言葉を濁されました. 以下の数字に根拠は無いですが, 手放す際には良くて 550 万円のうち 1/2-1/5 程度, 景気によっては悪くてゼロなんじゃないかと思います. 所有権の購入はリゾート会員になるための入会金みたいなものです.


こんなやり取りを含む 2 時間程の見学と説明を受け, アメリカンエクスプレスのプリペイドカード 200 ドル分* をもらって帰ってきました. 時給 $25(飲み物付き) をもらいながらタイムシェアについての知見が深められたと思えばよい時間でしたよ. (*夫婦参加で 1 ペアにつき $100 貰えたのです. 今回は私と妻および私の両親で $200 となりました)


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タイムシェアで得る H社の利益
せっかくなので H 社がタイムシェアで得る利益を計算してみましょう.


タイムシェアの販売で H 社が得るホテル 1 室あたりの利益
一部屋を 1 週間使用する権利を H社が売るという事は 52 人から最低 550 万円の入会金を徴収できることになります. この時の販売で得られる利益総額と年間の管理費は以下の通りです.

販売で得る利益: 2 億 8,600 万円
年間管理費:  832 万円


先ず, 販売で得た 2.86 億円はまるまる利益となります.

年間管理費 を 365 日で割れば一部屋当たり 2.3 万円/泊程度になります.
一見安そうに見えますが, ホテルとして普通に貸し出すのとは異なり, 管理費として確実に収益が得られる部分を差し引いて考えるべきです..


一日当たりの管理費をワイキキエリアの平均稼働率 8 割* で割ると 2.87万円/泊となり約 3 万円/泊です. だいたい妥当な金額ですね. この事から, タイムシェアとして販売しようが, ホテルとして貸し出そうが, H社が年間に挙げる利益は殆ど同じだといえます.
(*ワイキキエリアの平均稼働率は 85-80% です)


今回伺った話では, まるまる一棟がタイムシェア用として販売されていました. 部屋数は少なく見積もっても 200 室はくだりません. この 200 室を全客室数と仮定しても部屋の販売だけで 572 億円が得られます. しかもその後は毎年 16.6 億円の管理費が安定して入ってきます. 最低料金の試算でこの金額です. 建設費を鑑みても大きな利益が出ますよね.


なかなか良い商売だと思います. タイムシェアでホテル一室の利用権を買うより, 妥当な株価であれば HGV の株を買った方が良いとおもいますよ.

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当然同額を投資することができるよね.
投資家であれば部屋の購入費 550 万円で 米国REIT を買う選択肢もあります. わざわざ同じ値段でホテル一室の利用権を買わなくても, この投資から生まれる配当金で 2 年に一回は平均的なハワイでの滞在費を賄えることでしょう. そして毎年管理費を支払う代わりに, 同じ 16 万円を積立投資すれば, 年を経るにつれて旅行の予算も増えることになります.

旅行に行かない年があれば, その年の配当金は積立投資に回すこともできますし, 妻や子供に何かプレゼントを贈ることにしても良いわけです. 対して H社の会員に毎年付与される 1 週間ホテルへ滞在する権利ではこんな自由度はありませんよね.

さらに, 毎年管理費と同額を積立てた元本 (550 万円+16 万円×経過年数) は, REIT の株価としてその価格が変動することはあっても 1/5 さらには 0 にまでその価値が毀損されることは殆ど無いでしょう. 妥当な値段で REIT を購入していれば仮に下がっても再び妥当な値段まで値は戻ります.

一方で H社のオーナーとなった場合には, 同じ金額をただ消費しただけで後には何も残りません.

この様に購入価格 550 万円及び管理費 16 万円の使い方を投資家としての目線も加えて考えるだけで, これだけの差が出てきます. 

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余談
販売員さんが, 実際に購入した方々の声として, 購入者が直筆したアルバムを解説付きで見せてくれました. 

・定年退職して初めての海外旅行で買ってしまいました.
・ハネムーンで衝動買いです.
・気づいたら買ってました.
                                                                                などなど...

こんな言葉が並んでいます. 

販売員さんの解説では, ハネムーンで購入していった夫婦は共に 24 歳で, 先月にローンを組んで購入していったといいます. 資産形成しなければいけない若年夫婦が, その門出にいきなり 550 万円のローンを背負い, さらに毎年値上がりする管理費も負担することになりました.

DINKS であれば最初はとるに足らない負担でしょうが, 子供が産まれるとその状況は大きく変わります. これは下手をすると夫婦間の火種となりえるものです. ハネムーンでその様な地雷を仕掛けた販売員さん, 貴女はなかなかお人が悪いですね.


退職して初めての海外旅行, 大切な退職金で買ってしまった夫婦についても同じことが言えます. 今後得られる収入は年金のみです. 貯蓄を切り崩して暮らしていかなければなりません. 1-2 年間の生活費がまるまる賄える金額の, 虎の子の退職金を一日で消費させました. 退職記念の旅行に夫婦間の火種として今後踏むことになるであろう地雷を仕掛けた販売員さん, やはり貴女はなかなかお人が悪いですね.


投資ブログに訪れる皆様なら余計なお世話だと思いますが, リゾートで開放的な気分になっても財布の紐まで緩めすぎず, 桁違いの散財をせぬように気を付けましょう.

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関連記事です.
ハワイに旅行へ行ってきました (人工池 (海水) で息子と遊んでいる写真を一枚追加しました.).
ハワイに行ってきました. The Ali'i Hilton Hawaiian Village

米国REIT の ETF に関する記事です.
iシェアーズ 米国不動産 ETF(IYR)


さて, 地雷という意味ではある意味関連記事です.

※基本は投資ブログです. 
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