2017年11月25日土曜日

AT&T Inc. (T) と Verizon Communications Inc. (VZ) を比較した

高配当で米国株投資家に人気が高い AT&T Inc. (T) および Verizon Communications Inc. (VZ) ですが年初から株価の下落が続いています. 通信事業者のさらなる土管化が進む懸念や, 競合他社との差別化が行いにくい点から価格競争に陥りやすく難しい経営環境が続いています.

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通信業界の背景
個人が通信事業者を選択する際には主に通信速度とカバー率が利用料金と比較して適正又は割安か否かで判断されると思います. そのため通信会社は競争力維持の為に絶え間ない設備投資が必要となるため莫大な投資キャッシュフローが毎年の様に必要となります.


1G (第 1 世代移動通信規格) から始まり 2G, 3G, LTE, 4G, 5G と技術革新により携帯電話の通信規格がめまぐるしく変わっていきますよね. それに合わせて通信速度は加速し, 利用できる通信データ容量は増大しましたが, その一方で消費者から見た利用コストは据え置き又は価格競争により引き下げられています.
まさに技術革新が消費者の利益になる業種の典型であり, 資本を食う豚を抱えた会社の見本のような業界です.


こんな構造的な欠陥とも言える問題を抱えた通信会社ですが, さらに残念な事に通信サービスが国民の隅々まで行き届いた先進国においては業界そのもののパイの拡大自体も大きくは望めない状況にあります.


さらに加えて, 通信は国の基幹インフラの一つとなりますから, シェア拡大の為に他国の市場を奪うべく切り込もうとしても, 対象国の法律や議会に阻まれて容易ではありません. そしてさらに加えて, 当該国内の通信ネットワーク構築の為の費用の発生と, 生じた費用と相応の利益を上げるに足る市場規模を奪うまでは莫大な赤字が垂れ流されますから他国への参入と言うのも非常にハードルは高いです.


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この様に, 通信業界は極めてドメスティックな産業としてその地位は守られているかに見えますが, 市場規模は限られ, 国内の同業他社との価格競争に常にさらされ, 絶え間ない設備投資による資金の流出が会社が存続する限り続きますからその経営は難しいモノとなります.


この様な状況を表すかの様に通信会社の株価の推移は緩慢なものとなるのが一般的であり, その投資リスクと先行きを反映して高配当で常に株価が据え置かれています.


通信会社も甘んじて受け続けるわけではなく, より利益率が高く通信との相乗効果も狙えるコンテンツビジネスを持つ会社の買収に動いているのが最近の流れなのですね. VZ については米メディア・娯楽大手のセンチュリー・フォックス (FOXA) の資産の一部または全ての取得について交渉が始まっていると報道がなされていますし, T については同じく米メディア・娯楽大手タイム・ワーナー (TWX) の買収を目指しています.


幸い米国は先進国の中でも人口が増えている国ですから, 市場環境としては恵まれた地域を基盤としているのが両社の強みではありますね.


以上を背景として持つ通信業界ですが, 昨年は株価が好調であったAT&T と VZ ともに今年は株価が低迷しており, 配当利回りから投資妙味が出てきました. そこでこれら会社に投資するならどちらがより魅力的か比較するというのが今回の趣旨です.


会社概要



会社名AT&T Inc.Verizon
Communications Inc.
銘柄コードTVZ
業種無線通信サービス無線通信サービス
従業員数256,800160,100
PER16.812.07
予想PER15.412.8
PBR1.738.52
ROA3.30%5.57%
ROE10.55%67.40%
自己資本比率30.47%7.97%
予想配当利回り5.64%4.96%


T と VZ の実績 PER, 予想 PER 共に大きな差があります. T の予想 PER は 15.4 倍と比較的適正な水準に収まっている一方で, VZ の予想 PER はおよそ 12.3 倍となっており若干割安に見えます. 両社共に配当利回りが株価の下支えとなっている状況が見て取れますが, 各指標からは VZ がより割安に見えますね. AOL と Yahoo! を買収し統合して Oath を新会社として設立しましたが, 45 億ドルかけて買収した Yahoo の効果がどれほどのものか判断しかねますし, 低い自己資本比率から FRB の利上げにより金利負担の増大も懸念されますから諸々の理由で T と比較し割安に据え置かれていると判断しています.


続いて ROA, ROE ですが両指標とも一見すると VZ が優秀ですね. 特に ROE は自己資本比率 7.97% の攻めの経営と相まってずば抜けた成績へとつながっています. ROA も 5.57% と文句ありません.


一方で T は ROE 10%, ROA 3.3% と, 両指標とも VZ に見劣りしますが, 自己資本比率が 30% あり, より堅実な経営が為されているところに好感が持てます.


後ほど ROE, ROA の推移をグラフを示しますが, T については年によって浮き沈みがありますがほぼ横ばい, VZ は 2012 年で底打ちし上昇基調となっています. VOD と合弁で設立した Verizon Wireless の完全子会社化で採算が改善し, 業績の改善に寄与しています.


業績推移



データ元はモーニングスターの HP です.


T は実に安定的に売上高が推移しているうえ, ここ数年はその伸びが加速しています. しかしその一方で純利益の伸びが伴わず純利益率の低下へとつながっています. VZ については 2012 年までから売上高, 売上高純利益率ともに減少傾向でしたが, 先の通り Verizon Wireless (以降 V.W.) の完全子会社化を切っ掛けとして業績が大きく改善し, 近年は 10% 前後の純利益率で推移しています. 長期的な業績安定性では T に軍配が上がりますが, 近年の業績推移については VZ がより魅力的ですね.


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ROA, ROE 推移





T の ROE については浮き沈みが激しいですが基本的にこの十年間変化はありません.
一方で VZ については 2013 年を境に ROE が急上昇しています. これも全て VOD との合弁子会社である V.W. を完全子会社化し, 傘下に収めた事が影響しています. この子会社化に際し, VZ は VOD 側に 1300 億ドルを支払いましたが, この時に主には借入によってこの資金を手当てしています. そのため総資産に対して純資産が相対的に小さくなり (自己資本比率 7.97%) その結果として高 ROE を示す会社となりました. この買収により ROA についてもしっかりと改善を見せていますから 1300 億ドル支払った価値がありましたね. ROE, ROA 共に近年の推移は VZ に軍配が上がります.


CF 推移




CF 推移を示しました. 両社共に営業 CF マージンが 24-28% 程度あり多額の営業 CF を生み出していますが, 会社運営に多額の設備投資が必要となりますので FCF マージンは 10% 程度に落ち着いています. なんか, 普通の会社ですね.


VZ は 2008 年に業績が赤字に転落し, それから 2012 年まで業績が低迷していましたが CF の推移は安定的でしっかりと FCF を生み出していたことが分かりますね. ここ数年 VZ の営業CF の推移が不安定ですね. ここに買収に伴う費用の発生などで投資 CF が嵩んでいますから, お陰で FCF は大きく低下しています. CF の推移と安定感には T に軍配が上がりますね.


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一株当たり利益や配当性向


どちらの会社も浮き沈みが激しくグラフが見にくいですね...
さて, 高配当株として気になるのはその配当性向ですが T は 約 92%, VZ は 71% 程度と, 一見すると VZ に増配余地があるように見受けられます. しかし一方で FCF ベースで配当性向を見た場合には T が 70% 程度である一方で VZ の 2016 年度は 180% に達しています. VZ の 一株当たり FCF は 2010 年を境に減少傾向に見受けられますから, この FCF 減少の流れを再び上向けるように変えていかないと, ちょっと厳しいんじゃないかと思いますね. FCF と DPS の関係で安定感を取るなら T に軍配が上がります.


株価推移


両社とも 2008 年の金融危機前の水準からほとんど株価が変わっておらず S&P500 の推移からは大きく under-perform しています. これは更なる成長が限定的な産業である両社にとって, ある意味では仕方のないことですね.


現在の配当利回り
   T: 5.64%
VZ: 4.96%


結論
業績の安定感, 配当継続の安全性から, 私の場合は T を投資先として選好致します. 今後の TWX 買収の行方が気になるところですね.


売買状況
実は電気通信株を主要投資先としてきたのにも関わらず, この両者は所有していないんですよ. 投資するには良い機会なのですが, 今のところ, これ以上は電気通信株を増やす事に躊躇いがあります. なかなか悩むところです.

私としては高配当株よりも配当成長株に投資上の優位性を見出していますから, そちらに注力する方が今は優先順位が高いですね. (参照: 配当成長株と高配当株. MCD と PFF の比較から分かる配当成長株投資の絶対的優位性)

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