各世帯の平均所得や貯蓄額, そして相対的貧困とは?後編

前編は全体及び各世帯や年齢別の所得状況に焦点を当ててきました. 今回は各世帯の資産状況に焦点を当てて進めていきます.


各世帯の貯蓄額


各世帯に共通して言えることは高齢者, 児童のいる世帯, 全体共に貯蓄の無い世帯が 15% 程度存在することです. そしてこの傾向は年収が上がってもほとんど変わりません. 倹約貯蓄に励む日本人といったイメージが私たちにはありますが, その一方で日本家庭の 15% は刹那的生活を送っており貯蓄 0 円となっています. 高齢者世帯で貯蓄 0 円とは日々の生活はどうするのでしょうか. 先が思いやられます.

生活保護という手厚いセーフティネットがあると思えばそれほど心配するものでもないのかもしれません. 私は絶対に使う立場になりたくはないですけど...生活保護下では出来る事が限られますし, 自分自身の価値とは何ぞやと悩みそうです. 年を取った後にこの悩みは嫌ですね. 我が家はこうならないための保険として投資行動を採っています.


ちなみに全世帯の所得中央値 428 万円と同額以下, 今回の例では貯蓄はあるが 400 万円以下の貯蓄しかない世帯は全世帯の 28.3% に及びます. これに貯蓄が無い世帯も加えた全体の割合は 43.2% です. 私は最低でも世帯年収の 1 年分は生活防衛資金として手元に置いておきたいと思っています. しかし,


全世帯の半数近くが生活防衛資金と呼べる金額すら手元にないことが分かります.

これでは何かあった時どうにもなりませんよね. 私にはこの状況は心理的に耐えられません. 皆さん凄いメンタルだと思います. さて, この様な状況がある一方で持てるものはやはり持っています.

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貯蓄額 1500 万円以上は全世帯の 19.8% を占めています. 4 割は貯蓄額 400 万円以下に対して 1500 万円以上は約 20% ですからこの 2 極化はすごいですね. ちなみに全世帯の一世帯当たり平均貯蓄額は 1033.1 万円です. 全世帯の 43.1% は 400 万円未満の貯蓄しかないのにも関わらず平均値は 1000 万円超えです. 中央値は推定 530 万円程度でしょうか. この格差たるや所得差以上です. 以前取り上げた総務省の二人以上世帯のデータではその中央値は 1000 万円前後, 平均値は約 1800 万円でした. 全世帯を対象とした今回のケースでも同程度の金額差が確認される結果となりましたね (二人以上世帯の詳細については過去記事を参照ください).

欲に任せて使っていたらいくらあってもお金は足りなくなります. やっぱりお金はどう使っていくか決めるのが一番難しいんですよ. (過去記事: お金を稼ぐのは簡単だ, しかしどう使うかが難しい.)



世帯別平均貯蓄額と借入額

29歳以下- 49 歳まで債務超過です. 主には住宅ローンでしょう. 29 歳以下の世帯は貯蓄額も借入額もかわいいものですね. 住宅購入者が本世帯では少数だからでしょうか. 一方で奨学金を借りる人は多いですからその残高も含まれているかもしれません. 詳細はちょっとわからないですね.

ちなみに私も第一種奨学金を総額 420 万円前後借り, 既に 120 万円ほど返済しました.機関保証を利用しましたが無利子の奨学金を得られたのは幸いだったと思います.


奨学金の返済滞納は自分のクレジットスコアに関わりますから淡々と払っていますが, 出来ることならば死んだときに一括返済したいくらいですね. 毎月の返済分も仮に投資に回せたなら資産効率がさらに上がるのですが仕方ないです.

よりみち
奨学金で資産運用などもってのほかと硬いこと言う人も中にはいますが, 日本の奨学金で給付型は少なく, 基本は米国でいうところの学生ローンです. ローンとして借りて返済する金なら出所と時期は異なりますが給料を前借りしたようなものでしょう. それをどう使おうが本人の自由です. 真っ当に学生生活を送り, ちゃんと社会の役に立つ人材に育つのなら余った奨学金をどう使おうが本人の責任の範囲内で行えばいいものですよね.

しかも, 貯金に回そうが投資をしようが結局はやっていることは一緒です. 貸借対照表上に他人資本として銀行経由で借入金の部に入るか自己資本として証券市場を通し直接純資産の部に入るかの違いだけです. この辺りは株式投資の社会的意義にまとめましたのでよろしければ参照ください.


私は博士後期課程在学中, 奨学金に加えてRA, GCOEプログラムで頂くお給料 (研究室や学校内の機器管理や実験指導等を行う対価として得る金銭です. バイトみたいなものです. 金額はささやかなものでしたが...) で生活しつつ, 20 歳から始めた投資についても継続するために節約して作った貯蓄を定期的に投資へと振り向けていました. そのおかげで卒業時には借りた奨学金を大きく超える資産を用意することができました. 社会人生活が始まる時点で奨学金返済に対する心理的圧力が消滅できる意味は大きいと思うんですよね.


さて, 話を元に戻しましょう.


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相対的貧困の定義
やっと相対的貧困の話に進めました.
貧困線を下回った世帯を相対的貧困と呼びます. この貧困線の出し方ですが以下の通りです.


貧困線=等価可処分所得の中央値/2


今度は等価可処分所得という聞きなれない単語が出てきましたね.


等価可処分所得
等価可処分所得=可処分所得/√世帯人数


上記式の通り, 可処分所得をルート世帯人数で割ります.
(可処分所得: 厚生年金保険料, 所得税, 住民税などの強制的に徴収され手元に残らないお金を差し引いた後の金額です.)


可処分所得 500 万円, 世帯人数 4 人


等価可処分所得=500/√4=500/2 =250 万円


ルートの計算は電卓でできるので細かいことは機械に任せましょう.


貧困線

相対的貧困はこの等価可処分所得の中央値 245 万円の半分 122 万円を下回る世帯を言います. 幸いにも最近の景気拡大により平成 24 年度と比較して顕著に相対的貧困世帯数は低下しているようです. 全世帯員(左)では 15.6%, 子供がいる現役世帯で大人が 2 人以上(中央) では 12.9%, 子供がいる現役世帯で大人が 1 人(右) では 50.8% 程度です. 片親世帯の困窮具合は察するに余りありますね.


どんな世帯が相対的貧困に該当するのか
両親+子供=世帯員 3 人の核家族の場合, 可処分所得 211 万円以下の世帯が相対的貧困に該当します. 月収に換算すると手取り 17.6 万円 (賞与なし) です. 家族 3 人生きていくことはできますが, 将来に対する備えを行うにはかなりの努力が必要となりますね. ギリギリ相対的貧困に該当する家庭でさえこの状態ですから, それ以下の等価可処分所得しかない家庭の場合には更に厳しい生活が予想されます.


日々, ギリギリの生活を送りつつ, 住居費, 万が一の時に対応するための生命保険料, 車が必須の地域に居住していた場合にはこれらの維持管理費, これら支出が固定費として生活に重くのしかかってきます. これでは子供の学費積立なんてできませんよね.

安倍政権が教育無償化を政策として掲げたのも頷ける状況なのは確かです. 相対的貧困該当家庭では, ただ日々を生活するだけで手いっぱいで, 将来の支出まで気が回らないでしょう. そんな状況で, 最もお金のかかる保育と大学授業料が支出から消えるのは彼らにとって大変な支援です. (一定の所得水準以下の家庭に対して一律に無償化は反対ですね. 本当に優秀な一握りの人材に対してのみ実施する大学無償化なら異論ありません. 本当に優秀な人材か見極める尺度を決めるのがまた大変ですが...)

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富裕線
本棒グラフに私が勝手に追加したのは『相対的富裕線』です. 中央値の245 万円の 2 倍の線をそのように呼称いたしました. 今回は 490 万円以上がその層に分類されますが, キリが良い ですし議論が楽なので今回は 500 万円以上とします.

この世帯に該当するのは全世帯員(左)では 12-13%, 子供がいる現役世帯で大人が 2 人以上(中央) では 10-11%, 子供がいる現役世帯で大人が 1 人(右) では 2.9-3.2% 程度です. 大人が 1 人の家庭では極端に少なくなりますが, 全世帯および大人が 2 人以上の世帯では最大で 13% の家庭がこの層に属します.


この層に分類されるためには以下の通りの条件が必要です. 社会保険料, 所得税, 住民税などの租税公課が差し引かれた後の計算ですから, 専業主婦世帯では意外にハードルが高いです. その一方で夫婦共働き世帯なら簡単に超えられます.


該当例
年収 650 万円以上で独身
世帯年収 1000 万円で DINKS
世帯年収 1300 万円で夫婦+子供1人
など

一般的に私たち庶民の場合には人的資本が富を生む最も強力な方法ですから, 先ずは人的資本の最大化を図り, 並行して資産形成による富の最大化を目指しましょう. そのうち相対的富裕層に該当する家庭になれますよ.

既に富裕線以上の等可処分所得を有する世帯はその現状に油断せず, 積極的に貯蓄や資産形成にその収入をまわすことで驚くほど速く資産形成を行うことができます. ぜひ頑張りましょう. 特に DINKS の状態にある若人夫婦は人生を楽しむのと同じくらい資産形成も真剣に楽しんだ方がいいですよ. 貯められるのは今だけですからね.

さいごに
さて, 日本家庭の一般的な状況を見てきましたが, 各家庭の苦しい生活状況が垣間見えるような結果でしたね. 特に貯蓄額の少なさ, 無貯蓄又は少額貯蓄世帯の多さに驚きを隠せませんでした.

日本の家庭状況を見ると, 富の再分配に少しでも貢献しないといけないという気になってきます. 本業を頑張り, 投資は坦々と確実に行い, これからも納税額を増やしていこうと思います (もちろん出来る節税はするんですけど)

私の場合は投資家マインドが先行し, お金を使う際にはこの買い物が本当に必要なのか慎重に吟味してから購入に至ります. そのためか, 日々の生活においてそれほど支出を必要としません. 無駄遣いをしませんから当然の様にお金は貯まる一方です. これは家族の協力があればこそできる事でもありますけどね. 家族に感謝です.

さて以上となりますが, 皆さんはどんな層に属していましたか??

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