2017 年度版バフェットからの手紙 日本語訳 (2/4) 2018 年 2 月 アニュアルレポートから

前回 (序盤: 業績報告, 会計規則の変更について, 買収について) の続きです.

バークシャーの保険事業についてです.

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保険事業について

保険事業の説明に入る前に, 私たちがこの分野にどの様に参入したのかを振り返ります.

1967 年初めに, 先ずは National Indemnity and a smaller sister company を 860 万ドルで買収するところから始めました.

この買収によりバークシャーは 670 万ドルの有形純資産を受取り, 保険事業という性質上, この資産を市場性のある有価証券へと展開することができました.

この得られた有価証券をバークシャー自身が保有するものと再編成するのは容易ですから, この買収はいわば「純資産部分の現金を現金で買う」ようなものでした.

バークシャーが払った 860 万ドルと純資産 670 万ドルの差額 190 万ドルの上乗せ部分は保険引受利益をもたらしました.
(じゅん補足:保険引受利益:保険の販売を通じて得られる利益)

そしてさらに重要なのは 1940 万ドルのフロートが得られたことです.

(じゅん補足:フロート:保険を引き受けて, 実際に支払うまでに保険会社に滞留する現金のこと)

フロートは他人のお金ですが, バークシャーが買収した 2 つの保険会社が有していたものです. これ以来, バークシャーにとってフロートは非常に重要なものとなっています.

私たちがこれらを投資する際には, そこから生まれる配当, 利子, 儲けは全てバークシャーに帰属します. もちろん損失が発生した場合も同様なんですがね.

フロートが実際に支払われる要因
①保険料が支払われてからその契約期間が満了するまでの期間中に発生しますが, 通常は半年から 1 年の間です.

②自動車修理などの場合にはすぐに保険金が支払われますが, アスベストなどの健康被害の場合には, その評価に長い年月がかかり, その後に支払いとなることもあります.

③ 例えば労働者の負傷によって重度の障害が発生し, その生涯を通して高価な介護が必要となった場合など, 何十年にもわたって支払いが必要となることがあります.

通常フロートは保険残高が増えるにつれて増加します.

さらに,自動車保険や不動産保険と比較して, 医療過誤や製造物責任のようなロングテールに対応するための保険はより多くのフロートを生み出します.

そして, バークシャーは長年にわたりロングテール事業のリーダーであり続けました. 特にバークシャーは再保険事業に特化しており, 他の保険会社が負ったロングテールに対する保証をバークシャーがさらに保証しています.
(じゅん補足:保険会社に保険を販売しているんですね)

この種のビジネスに特化した結果, バークシャーのフロートは驚異的に伸び, その規模は国内 2 位へと成長しています. 2017 年は特にとびぬけており, AIG からロングテール・ロス 200 億ドル分の再保険を引き受けたからです.

フロート推移


この時の保険料は 102 億ドルであり, 世界記録を更新しました.
2018 年のフロート残高の伸びは, はもう少しゆったりとしたものになると思いますよ.
通常フロートは増減を繰り返しながら年率 3% 程度つづ増えていくものです.

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フロートは銀行預金や解約オプション付きの生命保険と異なり, 引き出すことができません. この性質はバークシャーの投資決定において最も重要な点です.

チャーリーと私は, 自分自身が流動性問題に直面している可能性のある他人の (または友人の), 好意に依存するような運営をバークシャーで行っているわけでは決してありません.
(じゅん補足:世間一般が資金振りに苦慮している状況で, バークシャーもそのような状況とならない様に気を付けているって意味ですよね. 周りが困っている時に資金を提供できる側にならないといけませんものね.)

2008-2009 年の金融危機の際には, 私たちは財務省証券を保有する (積み上げる) ことを好みました.

これは私たちを銀行預金やコマーシャルペーパーなどの資金調達源に頼らざるおえなくなる状況から私たちを守るためであり, 市場閉鎖などの極端な状況を含む不連続な経済状態からバークシャーを守り, 耐えられるよう意図的にこの状況を作り上げました.

フロートの欠点はリスクが伴う事であり, 時にはリスクの大海原となるところです.

例えば Lloyds insurance ですが 3 世紀にわたり良い結果を生み出してきました. しかし, 1980 年代に入りいくつかのロングテール保険事業で潜在的で大きな問題が Loyds の表層に表れており, 歴史的に名高い運営を完全に破壊する恐れがありました. (一応言っておきますがこの問題については今では完全に回復しています).

近年のバークシャー保険事業のマネージャーは保守的で慎重な人物が担当しており, それらの資質を最重要として優先させる文化の中で働いています.

その規律ある行動はほとんどの年におい利益を生み出しました. この様な場合, バークシャーのフロート費用はゼロになります.

しかしながら昨年 9 月にこれまで業界が経験したことのない  3 つの重大なハリケーンがテキサス, フロリダ, プエルトリコを襲いました. この点においてはフロートに対するリスクが明らかとなりました.

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長いので意訳します
・今回のハリケーンで発生した全米の損失は 1000 億ドルくらいだと見積もってるけどこれから増えるかも

・バークシャーの損失額は多分 30 億ドルくらい, でもこれも増える可能性はある.

・バークシャーのGAAP純資産が 1% 程度減少しただけ .他の再保険会社だと 7-15% 程度失ったところもあったよ. バークシャーやるだろ(ドヤ顔 (`・ω・´)キリ)

・全米で400 億ドル以上の被保険者負担を強いる災害の発生確率は 2% 程度だと見積もってるけどもちろん時間の経過とともにその都度変動するよね.

・ 400 億ドルの災害でバークシャーが被る損失は 120 億ドルと想定するものの, 保険以外から得られる年間収益よりはるかに低い額だから大丈夫. この安心感がバークシャーの魅力だよ. この安心感から再保険事業でいっぱい客があつまるんだよ(ドヤ顔 2 回目 (`・ω・´)キリ).

・2017 年以前は 14 年連続で保険事業から利益を計上し, 税引前で 283 億ドルだった. 今年は損失になったけど -32 億ドルくらいだった.

投資その他の事業についてに続きます.

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2017 年バフェットからの手紙. 2018 年 2 月アニュアルレポートより
前回 (序盤: 業績報告, 会計規則の変更について, 買収について)
↑ EPS (一株当たり利益) と書いたつもりが PER (株価収益率) と書いていた様です. 本文中訂正しています.

投資だけでなく, 人生においても参考となる助言が多いのもバフェット氏の特徴です.

他にもいろんな記事を書いています. 詳細はタブ内を参照ください.

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