資産形成における株式投資の妥当性について②

30 年 および 50 年を一区切りとしてリターンを比較する.
さて, 前回の記事より 200 年後のリターンの圧倒的な差により複利の力が如何に強力か理解できましたが, この 200 年という期間は私たち個人投資家には全く現実的な投資期間ではありません. そこで, より現実的な期間である 30 年を一区切りとして株式, 国債 (長期, 短期) それぞれの利回りを改めて比較いたしました. それが以下のグラフになります. 併せてドルの減価についても比較対象として示しています.

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30 年間累積リターン比較
個人投資家が 30 代中盤から投資をはじめ, 定年退職を迎える 60 代中盤まで運用したとするとおよそ 30 年程度の運用期間があります. この様な例をモデルケースとしてみてみましょう. 投資額は 1 年目に 1 ドルのみ拠出し, 運用期間中は配当再投資を繰り返したと仮定します.
年率30 年累積
株式6.7%/年$7.00
米国債 (長期)3.5%/年$2.81
米国債 (短期)2.7%/年$2.22
ドル-1.4%/年$0.66

上記の通り 30 年間の投資で株式の累積リターンは 7 倍となりましたが, 国債ではわずか 2.81倍 (長期) および, 2.22倍 (短期) のリターンに留まります. 一方で, これら資産の伸びとは対照的にドルは同期間で 34% の価値を失います. ドルを現金としてそのまま持っていた場合と株式に投資した場合の差は約 10.6 倍に達することがこの結果から分かります.

50 年間累積リターン比較
まだまだ続きます. 30 年から 50 年へと投資期間を延長してさらに比較してみましょう.

個人投資家が 20 代中盤から 30 代中盤までに投資をはじめ, 80 代中盤まで生きたとするとおよそ 50 年程度の運用期間があります. 生涯を一投資家として捧げる人生といえますね. この様な例をモデルケースとしてみてみましょう. (ちなみに私は 20 歳から投資を始めています. 予定通り 80 代中盤まで生きたとするとその運用期間は 65 年程度になりますね. )


さてモデルケースの運用期間 50 年をかけて株式の運用を行った場合, 以下のような結果となります.


年率50 年累積
株式6.7%/年$25.60
米国債 (長期)3.5%/年$5.58
米国債 (短期)2.7%/年$3.79
ドル-1.4%/年$0.49


株式の累積リターンは 25.6 倍にも達し, 他を圧倒している事がわかります. 国債 (長期, 短期) ではそれぞれ 5.58 倍, 3.79 倍にしかなりません. その一方, 現金で保有した場合にはその価値はさらに下がり, 50年間の累積で 51% の価値を失います. 株式投資を行った場合と現金として保有した場合の差は約 52 倍にも達し, その差は開くばかりです.


元本の毀損を恐れるあまり, 銀行預金, タンス預金で資産を防衛しようと試みる例は多いですが, これらの方法では確実にその価値を失っていきます. 限りなくゼロに張り付いた今の金利下ではインフレには抗えず, 既に『負けが確定したゲーム』となっているからです. 大切に抱え込もうとすればするほどに, その価値を失うことに繋がります.


前回および今回の記事で, 投資を行うことの必要性がご理解いただけたのではないかと思います. 以下では配当再投資の威力についても言及いたします. 

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配当再投資がリターンの要
毎年受け取る配当金も, この株式のリターンの源泉です. もし毎年受け取る配当金を生活費その他へと使い込んでしまった場合にはこのリターンとはなりません. 現在米国株から得られる配当金の利回りは, 1.6% 前後 (ETF, VTI 基準, 2017, 07月末) です. この配当金を再投資しない場合, 株式の年率リターンが 1.6% 押し下げられ年率 5.1% のリターンに変わります. このわずかな差がどれほどのパフォーマンスの差につながるかといいますと以下の通りです.


30 年後累積リターン比較
年率30年累積
配当再投資 (無)5.1%/年$4.45
配当再投資 (有)6.7%/年$7.00

上記グラフより 30 年を 1 区切りとすると, 配当再投資の有無によりリターンに約 1.57 倍の差が生じることがわかります.
この運用期間をさらに 50 年まで伸ばした場合, 以下のようなグラフとなります.

50 年後累積リターン比較



年率50年累積
配当再投資 (無)5.1%/年$12.03
配当再投資 (有)6.7%/年$25.60

配当再投資 (有) の累積リターンは 25.6 倍に達し, 配当再投資 (無) の累積リターン (12.03 倍) と比較してその差は 2.12 倍まで広がります. 私たちが運用可能な年数で比較してもこれほどの差が生じます. 配当再投資の重要性が再認識できたのではないでしょうか.


ちなみに, 年間 100 万円を 30 年間積み立て投資し, 年率 6.7% で運用した場合の累積額は約 8950 万円 (内訳: 元本 3000 万円 + 受取配当及び値上り益 5950 万円) になります.
これが 50 年の運用では 3.67 億円 (内訳: 元本 5000 万円 + 受取配当及び値上り益 3.17 億円) へと膨張します. まさに桁違いですね.

一方, 配当再投資せずに運用した場合にはそれぞれ 6700 万円 (30 年運用) および 2.16 億円 (50 年運用) 程度にしかなりません. (とは言っても勤労以外の手段で一人が一生で生み出す価値としては十分なものがあるといえますね.)

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子供 NISA の利用を考えてもいい.
株式は短期では値動きが荒くその予測は困難ですが, 長期間の運用になるほどそのリターンは安定したものとなり, 投資先が VT (世界) や VTI (米国) などの市場に連動する ETF であれば, 結局は株式が持つ平均利回りに帰結します. この様に考えれば, なかなか投資に二の足を踏む方であっても, その一歩を踏み出してみようと思えるのではないでしょうか. 特により長期間の運用が可能となる子供であれば, その運用期間の長さが最大の武器になります.
子供の為に, 子供の名義で, その一歩を踏み出すのは親が子にしてあげられる最大の贈り物となることでしょう.

ちなみに, 今年産まれた私の息子がこれから 100 万円を投資して 80 歳まで配当再投資を繰り返しただけでその累積リターンは 1.79 億円にもなります.

まとめ
今回の記事で示したデータやグラフは投資家が普段見ている世界を表すものです. 特段珍しい話やデータを含むわけでもなく, ありきたりでその辺に転がっている様なものです (まとめるのは大変でしたけど...). その一方で普段生活しているだけではこういった情報に触れる機会は皆無であり, その結果としてこの世界を知ることなく人生を歩み, そして終える方も少なくありません. 特に日本人は投資に対し積極的無知の姿勢を一般的には採りますからその傾向はより強いでしょう.


今回の記事で, 投資の必要性と株式を投資対象とする妥当性が明確になったのではないでしょうか. ご家族, パートナーと話し合いながら投資への一歩を考えてみてはいかがでしょうか.


注意点 : これらの計算は過去の実績に基づき行ったものですから, 今後も同じリターンが続くかは残念ながら読めません. また, 米国株の場合 1929 年の暴落では同水準へ株価が回復するまでに 15 年程を必要としました. 予想以上に長期間低迷する場合もあり得るということです. また, 近年でも 2008 年の金融危機では 50% 近い暴落を起こしています. こういった過去の状況も踏まえたうえで, 各家庭が抱えられるリスクの範囲内で投資を行って頂ければと思います.

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